キャッシュフロー計算書は、2期分の貸借対照表と損益計算書があれば作れます。手順は4ステップ。手計算が大変なら、無料の作成ツールやExcelテンプレートを使えば、数字を入れるだけで完成します。
STEP 1必要な資料をそろえる
キャッシュフロー計算書は、新しく帳簿をつけて作るものではありません。すでにある決算書の数字を組み替えて作ります。基本は「前期と当期の貸借対照表」と「当期の損益計算書」の3つ。これに、増えた・減ったの中身が分かる明細を足すと、正確な計算書になります。
| 資料 | 何に使うか | 必須度 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 前期・当期の2期分 |
売上債権・棚卸資産・仕入債務・固定資産・借入金などの増減を計算します。キャッシュフロー計算書の土台です。 | 必須 |
| 損益計算書 当期 |
税引前当期純利益をスタートに、減価償却費・受取利息・支払利息などの調整額を拾います。 | 必須 |
| 株主資本等変動計算書 | 配当金の支払額や増資の額など、純資産の動きを確認します(財務CF)。 | あると正確 |
| 固定資産台帳 | 設備の取得額と売却額を分けて把握します(投資CF)。売却損益や減価償却費の確認にも使います。 | あると正確 |
| 借入金の明細 返済予定表など |
新たな借入と返済を分けて記載するために使います(財務CF)。 | あると正確 |
| 法人税等の申告書・納付書 | 実際に支払った法人税等の額を確認します。損益計算書の金額とはずれることが多い項目です。 | あると正確 |
| 勘定科目内訳明細書 | 未収入金・未払金などの中身を見て、営業・投資・財務のどれに入れるかを判断します。 | 必要に応じて |
- なぜ明細が必要? 借入金や固定資産は、2期の残高の差(純額)だけでは「いくら借りて、いくら返したか」が分かりません。キャッシュフロー計算書は原則として増加と減少を分けて書く(総額表示)ため、明細で中身を確認します。
- 上場企業の場合 有価証券報告書に貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書がそろっています。読む練習なら、まずは実際の計算書を見比べるのが近道です。
- 中小企業の場合 作成義務はありませんが、手元のお金の動きが見えるようになり、金融機関への説明や資金繰りの改善に役立ちます。
まずは2期分の貸借対照表と損益計算書だけで作ってみて、気になる項目だけ明細で確かめる、という進め方で十分です。
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STEP 2キャッシュの範囲を決める
キャッシュフロー計算書の「キャッシュ」は、会計基準で決められた「現金及び現金同等物」のことです。貸借対照表の「現金及び預金」とは範囲が一致しないことが多いので、作り始める前に、どこまでをキャッシュとするかを決めておきます。
現金:手許現金と、要求払預金(当座預金・普通預金・通知預金など、いつでも引き出せる預金)
現金同等物:容易に換金でき、かつ価値の変動リスクがわずかな短期投資
(連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準)
| 項目 | キャッシュに含まれる? | 判定 |
|---|---|---|
| 手許現金・普通預金・当座預金 | いつでも使えるお金なので「現金」に含まれます。 | 含む |
| 3か月以内に満期の定期預金 | 取得日から満期日までが3か月以内の短期のものは「現金同等物」になります。 | 含む |
| 譲渡性預金・CP・現先・公社債投資信託 | 取得から3か月以内に満期・償還を迎える短期のものは「現金同等物」の例として挙げられています。 | 含む |
| 3か月を超える定期預金 | すぐには使えないため含めません。預け入れ・払い戻しは投資CFに記載します。 | 含まない |
| 株式・長期の債券 | 換金できても価格の変動リスクが大きいため含めません。 | 含まない |
| 当座借越 | 日常の資金管理で使っている場合は現金同等物から差し引くことがあり、借入金と同じ使い方なら財務CFに記載します。 | 実態で判断 |
「キャッシュの範囲」は注記の対象
どこまでを現金同等物に含めるかは、会社が決める会計方針です。そのため財務諸表には、次の内容を注記します。
- 資金の範囲:キャッシュフロー計算書の「現金及び現金同等物」に何を含めたか(会計方針として記載)
- 貸借対照表との関係:期末の現金及び現金同等物の残高と、貸借対照表の科目(現金及び預金・有価証券など)の金額との関係
- 範囲を変えたとき:変更した旨・理由・影響額。一度決めた範囲は、毎期続けて使うのが原則です
注記の例:貸借対照表との調整
| 現金及び預金(貸借対照表) | 1,200 | |
| 預入期間が3か月を超える定期預金 | △200 | |
| 有価証券に含まれる公社債投資信託など | 100 | |
| 現金及び現金同等物(キャッシュフロー計算書) | 1,100 |
上場企業の有価証券報告書では、キャッシュフロー計算書の注記にこの調整表が載っています。自社で作るときも、最後に「期末のキャッシュ残高が、この範囲の合計と一致するか」を確かめましょう。
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STEP 3間接法で営業CFを組み立てる
間接法は、損益計算書の税引前当期純利益からスタートして、「利益」と「実際のお金の動き」のずれを一つずつ直していく方法です。ずれが生まれる原因は、大きく次の3つです。
- お金が出ていかない費用:減価償却費や引当金の増加などは、費用になってもお金は出ていきません。→ 足し戻す
- 営業に関わる資産・負債の増減:売上債権・棚卸資産・仕入債務が増えたり減ったりすると、利益とお金の入り方がずれます。→ 増減を調整する
- 本業以外の損益:固定資産の売却損益や、受取利息・支払利息などはいったん取り除き、投資CF・財務CFや小計の下で扱います。
資産が増えたらマイナス、負債が増えたらプラス
売上債権や在庫(資産)が増えるのは、お金が形を変えて寝ている状態なので差し引きます。仕入債務(負債)が増えるのは、支払いを待ってもらってお金が手元に残っている状態なので足します。
計算機で試してみる
下の数字を書き換えると、営業CFがどう変わるかをすぐに確認できます。たとえば「売上債権(当期末)」を増やすと、利益は同じでも営業CFが減ることが分かります。
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主な調整項目
STEP 4投資・財務CFを作り、現金残高と照合する
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